【アマプラ映画レビュー】1987年『吉原炎上』はとても深い:75点




アマゾンプライムにある見放題映画から見逃してきた映画を選び出して観てみる企画、『アマプラ映画レビュー』。今回のアマプラ作品は80年代東映エロ映画の傑作でもありテレビ映画としても強烈なイメージを茶の間少年たちに埋めつけた炎上系映画『吉原炎上』です。

「いつになったら炎上するのだろう」という緊張感が映画全体を支配しており、実際に炎上のシーンともなるともはや後の祭りで「打ち上げ花火」というフレーズが当に相応しい日本人の狂乱を目の当たりにすることができました。



まだ?炎上まだ?度:★★★★☆
総評:75点





作品のコアとなるのは吉原で働く人間たちの無我的な喜びややり場のない怒り、無常感溢れる哀しみ、そして健気な楽しみなどなど。ストレートに当時の風俗や人の営みを再現している以上に、人間の内面をさらけ出す演出は極めて分かりやすくて鮮やか。観終わった後に残る残留感も映画としては最高レベルに胸糞悪く、3000円程度でフラっとあちらに通える現代を連想せずにはいられない作品です。



脈々と受け継がれ、厳然と存在する風俗文化の歴史的文化的正当性など、リアルな映像描写の前にはいともたやすく崩壊する良い例だと思います。如何に当時それが政府公認だったとしても、明らかに本能的に「間違っている」ということはキャラクターを通じて容易に理解できます。つまり明治時代に生きた日本人は我々となんら思考的な差異はなく、ただ理不尽な社会とそれに無意識的隷属的に追従する市民と現代人に一体なんの違いがあるのだろうか、ということです。唯一の例外は救世軍の若でした。少しでも油断すれば、モラルと中庸を失えば、いやむしろかなり努めて自己を諌めなければ流れてしまう人間の本性が痛いほど強烈に表現されています。想像力の欠如という事に尽きるでしょう。「わかっちゃいるけどどうしようもない」時代は終わり、どうにかすればどうにかなる時代になりました。

改めてこの映画を通じ、「理不尽」で「非合理的」な事象に抵抗していくことが求められている気がします。人身売買や殿様商売、帝の威を借りる攻撃的な官吏、「人情」の二文字で全てを丸く収めてしまう人々。

所謂人類多年に渡る幸福追求の血と汗と涙の結晶を結実させるべく、この「ただ事では済まされない」怨み、哀しみ、涙にゆれた吉原は常世の夢でもなんでもなく、事実でしかも現在進行系。考える必要があると思います。

『吉原炎上』はその強烈なビジュアルでインパクトを発揮すると同時に、非常に考えさせられる作品であるのです。
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