[書評] 石田真康『宇宙ビジネス入門』はとにかく読みやすい

Orbital Test Vehicle 5 Mission

石田真康氏による著作『宇宙ビジネス入門』を読みました。日本を中心としつつも、世界の宇宙ビジネス周りの潮流がサッと読める平易な形で纏められています。事前知識があまりなくても読み進めることができる地球の歩き方的ガイドブック的な内容なので、「まとめ本」としてはとても良いものになっていると思います。また普段ほぼ日本語ニュースの表舞台に出てこないリモートセンシングや衛星画像業界の動向について結構しつこく言及されているのが、ビジネス本らしくて素敵です。


ただし、日本の宇宙ビジネスに関しては依然として非常にニッチなエリアですので同じ単語やセンテンスが文中で何度も重複登場してしまうのは居致し方ないとしても、少し文章水増し感があって何とも言えない気分になります。本当に簡潔な市場レポートといった感じです。まさに「宇宙ビジネス入門」書です。

とは言え、植松電機のカムイロケットがスルーされていたりと、そこそこ存在感のある登場人物たちが欠けていのが少し気になります。著者の所属するフレームワークから外れているからなのかも知れませんが、それにしてもイプシロンロケットのトップダウン外交についても言及なしとはこれ如何に。

またイメージ画像が皆無なので、入門書としては少し不親切な気がします。色々ロケットの名前を列挙されても、企業のロゴとロケットの外観がないと識別は困難かと。また宇宙ビジネスはイメージが強力な武器の一つですので、生写真あったほうが読んでいてテンション上がると思います。

もっと言えばやはりロケット打ち上げ動画の訴求力は唯一無二ですので、画像・動画・文章そして直リンクを統合して提示できるウェブの記事のほうがこの手のジャンルは適しているような気がしました。これは今後もこのサイトでも追求していきたいテーマです。

そして宇宙ビジネスは本当に流動的で、ド肝を抜くようなニュースが次々と噴出してきます。この本はつい一月前に出版されたものですが、SpaceXの新しい火星植民計画や大陸間弾道ロケット定期便計画は勿論触れられておらず、またポール・アレン率いるストラトローンチシステムズの怪物級航空機「ロック」も加筆は間に合わなかった様子。リアルタイムにインパクト感じるなら、ネットを常にチェックするのがベストですね。


ほか良かった点としては、筆者の海外での体験がたまに記されており、その熱気がよく伝わってきたという点。そこから見えてくるのは、日本の宇宙ビジネスは本当にまだまだというか海外単一市場にて目立たなければならない、というある種の警鐘が薄っすらと感じられた点です。全くネガティブな事は書かれていませんが、日本の宇宙ビジネスモデルの限界が、文章からにじみ出ている気がしてなりません。




image:SpaceX
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