ほぼ失敗が確定してしまったMRJ。三菱は何を見誤ったのかー




改めて設計変更が宣言され、もはや「2020年に完成」が困難な状況に陥った日の丸ジェット旅客機『MRJ』

「エンブラエルやボンバルディアの次世代機よりも早く市場に登場する」、というのがキャッチフレーズだったにも関わらず、度重なる納期の延長でライバルの次世代機より登場が遅くなるのでは、とまで言われている。

そもそも、最初の予定では2013年完成予定。これが7年伸びたのである。

機体設計のほぼ全面的な見直しである。

このまま行くと2020年を大幅に超過し、多額の違約金を各社に支払うのは必須と考えるのが妥当だろう。その違約金で、エアバスやエンブラエルのような実績もあり、かつMRJよりも新しい設計の機体を買うのは、全くもって合理的な経営判断と言える。


現在は「CEO直轄体制」ということで、海外から高額なコストを掛けて専門家を招聘し、設計を変更中。三菱重工は社運をかけたプロジェクトということで、全力投入を宣言しているが、三菱の他の事業の不況もありそれも怪しい。

設計変更の要因となった「制御機器」の不具合も、軽量化を急ぐあまりに起きた事態だ。
三菱は現代の零戦を作ろうとしているのか。

さらにMRJのパーツの大半が海外製。これに加え、当初のストロングポイントであった燃費の良さも、再設計により重量増加は避けられない。


一時期もてはやされたカーボン製の主翼も、強度不足から使用が見直された。




一方、中国が開発しているC919
開発の遅れが指摘されていたが、MRJより早く完成しそうな様相を呈してきている。
同じく開発が遅れる航空機である中国のC919ですら、危機的状況は脱しつつある。

そもそもMRJのライバルとなる中国の「ARJ21」は既に生産を開始している。


他方、軍事面では順調に見える日本の航空産業。
川崎重工はC-2やP-1を生産。

しかしこれは軍事面での話。民間の形式証明取得の安全面などハードルは軍用より遥かに高く、川崎重工はその点を鑑み、C-2民間転用を諦めた。



本の技術の集大成とも言えるプロジェクトが失敗するケースは、少なくない。
火星探査で日本の技術を文字通り集大成して作られた探査機「のぞみ」。
あらゆる最新技術を大量に投入した結果、火星軌道で通信途絶。
このプロジェクトには10以上の観測機器が搭載されており、過剰とも言える盛り込みが行われていた。

それと同じ現象が、現在このMRJで起きているのではないだろうか。

加えて官民双方のトップ陣の「こうであって欲しい」という都合のいい解釈。
形式証明が如何に困難かを理解していなかった上部層の失態でもある。

とにかく残念でならない。

更に三菱重工の他ドメインでも、今後の困難は明らかだ。
船舶を始め、ロケット関連でもHⅢの不透明さは群を抜く。
日本の非常に厳しい規制の中、商用ベースで宇宙開発を推し進めろというのも酷な話だが、他国から受注をとれず、内需のためだけに存在するロケットは大きな足枷となるだろう。



海外の論調

シアトルタイムスは、MRJの2年の延長は地元シアトルにとっては雇用の長期化へつながるとして、歓迎の様子。
http://www.seattletimes.com/business/boeing-aerospace/delay-in-mitsubishi-regional-jet-means-more-work-in-washington-state/

アメリカにとってMRJの生殺し状態は、都合のいい話しでしか無いのかもしれない。


2017/06/06追記

P&WのエンジンPW1200GがFAAの形式証明を取得した。パリ航空ショーにANN仕様の試験モデルを出すなど比較的景気の良さそうな雰囲気だが、そもそもの設計や量産計画が不透明過ぎる事は変わらない。このお通夜モードはオリンピックまで続きそうだ。

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